南アルプス北部 大滝ノ頭(25m)、小仙丈ヶ岳(27m)、仙丈ヶ岳(3033m)、大仙丈ヶ岳(29m)、蕗ノ平(25m)、伊那荒倉岳(25m)、横川岳(24m)、三峰岳(2999m)、間ノ岳(3189m)、中白根山(31m)、北岳 (3193m) 2010年7月17〜19日

所要時間
7/17
 7:06 北沢峠−−8:23 大滝ノ頭−−9:10 小仙丈ヶ岳 9:23−−10:12 仙丈ヶ岳 10:41−−11:03 大仙丈ヶ岳−−11:58 休憩 12:11−−12:35 蕗ノ平−−12:53 伊那荒倉岳 13:01−−13:36 独標−−14:05 横川岳 14:29−−14:45 野呂川越−−15:15 両俣小屋

7/18
4:18 両俣小屋−−5:08 野呂川越 5:16−−7:38 三峰岳 8:15−−8:57 間ノ岳 9:21−−10:04 中白根山−−10:25 北岳山荘

7/19
3:55 北岳山荘−−4:48 北岳 5:09−−5:22 肩ノ小屋 5:34−−6:31 白根御池小屋−−7:40 広河原山荘 7:53−−7:56 バス停


概要
 広河原から北沢峠に上がり、仙丈ヶ岳を経由して白根二山周遊。当初は白根三山縦走だったが、私が入った夜に奈良田へ通じる県道が崩壊、通行止めとなりバス運行予定が怪しくなったため急遽広河原から2泊で回れるコースを検討、今回のルートとなった。

 コース上、大仙丈ヶ岳から野呂川越間は利用者少なく、蕗ノ平より下部は倒木が多い。また、北沢峠〜仙丈ヶ岳間よりも道のグレードはぐっと落ち、ハイマツが道にはみ出していたりシラビソ樹林中は踏跡が薄い箇所があったりするので初心者は要注意。主要ピーク以外には標識はほぼ皆無。

 両俣小屋は位置の関係で肩の小屋や北岳山荘とは比較にならないほど利用者が少なく、テント場も広くて空いていて水は豊富で大変環境が良い。ただし、今年は中白根沢の水量が多く、この沢沿いの登山道は通行不能で直接北岳に登れない事情もあるかもしれない。
 野呂川越〜三峰岳間は大仙丈ヶ岳〜野呂川越間よりも道の状態は良い。標高2700mを越えると森林限界で一気に視界が開ける。標高2900mより上部は岩稜帯で三峰岳、間ノ岳、中白根山、北岳は展望を遮るものは無く360度の展望を楽しめる。空気の透明度が良ければ槍穂はもちろん、立山、剣岳、後立山連峰も見ることができる。今回は奥日光や尾瀬m谷川岳周辺も見ることができた。

 肩ノ小屋を過ぎて小太郎山分岐から本格的な下りとなり、白根御池小屋からしばらくはシラビソ樹林のトラバース道、そして急な下りが続いて大樺沢沿いの登山道に出る。こちらはずっと良好な道が続く。

 肩ノ小屋、北岳山荘は夏山シーズンの週末は大混雑。早めに到着しないとテント場はいい場所の確保は困難。特に今年は大樺沢の残雪が多く肩ノ小屋経由で北岳に登る人が多く、肩の小屋の混雑が顕著。7月下旬現在、大樺沢の下りはピッケルは不要だがアイゼンが必要な状況とのこと(北岳山荘の小屋番)。芦安駐車場も大混雑し、前夜に入らないと下部の学校周辺の駐車場に止めることになる。今年は奈良田の県道が崩壊し、実質上奈良田から入ることができなくなったため、芦安駐車場はいっそうの混雑が予想される。

地図クリックで等倍表示



 海の日の3連休は、10年くらい前は梅雨明け直後で絶好の夏山日和だったのだが、温暖化の影響か近年は梅雨明けは7月終わりから8月上旬が続いており、3連休は悪天で山に行かない年が続いていた。それが今年は連休初日から好天が予想され、連休初日はやや大気の状態が不安定で午後は雷雨が予想されたが後半はそれも解消して絶好の夏山日和となりそうだった。こうなると出かけたくなるのが人情だ。

 3日使えるのでそれなりのコースを歩きたいと考えた。近年は北アルプスがメインだったので今年は南アにしようと考えたが、問題は林道の状態だ。今年は梅雨末期に集中豪雨が多発、あちこちで道路が寸断され長野南部では集落が孤立したりもした。便ヶ島への林道は通行止めとの情報はネットで上がっていたので最初から計画から除外したが、塩見辺りは不明だ。塩見新道も候補に上がっていたが林道はいかにも怪しいのでパス。あとは椹島であるが、ここはバスの関係で登山開始時刻が遅くなるため計画から除外。残りは北部しかない。せっかくなので久しぶりに北岳に登るかと考え、だったら白根三山縦走もいいかと考えるようになった。労力的に考えれば広河原から入って奈良田に下るのがベターで、下山したら即帰れるように奈良田に車を置くのが良かろう。芦安から入る場合より若干スタートが遅くなるが、帰りのことを考えれば些細な問題だ。

 高速道路は土日\1000の割引があるが、6月後半になって中部横断道が無料社会実験対象路線となり、調布から増穂まで乗ったとしても通勤割引時間帯なら定額区間を除いて軽自動車で\1050であるので土日にこだわる必要はない。芦安で降りる場合は白根が最寄だが奈良田の場合は現在の終点の増穂まで走る。富士街道を南下、ショートカットコースで県道に入って北上、道端にはあちこちにマイカー規制の案内看板が立っているが承知済みだ。幸い、広河原への林道が崩れてバス運行不能の案内はなかった。

 転付峠入口の新倉を通過、真新しいトンネルを抜けて川沿いの旧道を進んでいくと突如として工事用の車止めが道の真中に立っている。何か夜間工事でもやっているのかと思いつつ進むとカーブで1台の車がライトをつけたままハザードも出さずに止まっている。なぜ止まっているのか分からなかったが、どうも追い越しても大丈夫なようなので右から前に出てカーブを曲がると50mくらい先にパトカーとライトバンが止まっており、そのヘッドライトに照らされて道路上に木が倒れているのが見えた。ここは右は川、左は数10mくらいの高さの法面で近くに立ち木は無い。ということは法面の上から落ちてきたことを意味する。木の先は車のライトが僅かしか届かず真っ暗に近かったが、岩だか土砂だか分からないが盛大に路面に盛り上がっているようだった。地元民らしき女性に話を聞くと、今から1時間半くらい前に崖崩れが発生したとのことで、すぐに復旧できる状況ではないので戻った方がいいと言われた。丸山林道は通行可能か聞いたが、たぶんOKではとの回答。さて、どうすべきか? 丸山林道経由で入れたとしても問題は明日のバスが計画どおり運行されるかどうかである。当然、明朝奈良田を出発する客はほぼゼロだろうし、バス自体もたぶん当日に下界から上がってくるのだろうから、営業所の判断によってはダイアが大幅変更になることも考えられる。まあ、今回は2泊3日ならばどこを歩いてもいいので奈良田にこだわる必要はなく、リスクをとって失敗するより安全策で行くことにして芦安を目指すことにした。最初から芦安に入っていれば睡眠時間は1時間以上長くできたなぁ。この判断は正解で、丸山林道は以前から通行止めでマイカーで奈良田に入れない状況だったのだ。

 金曜夜11時だとまだ芦安駐車場の空きは多く、バス停最寄のスペースを確保できた。それは良かったのだが夜中に次々と車がやってくるし、トイレ近くだったので人の往来も多くておちおち寝ていられず睡眠不足だった。それでも始発(5:10)に乗るべく20分くらい前に行列に加わる。タクシーは台数が少なくて客をさばききれないので大半はバスに乗る。基本は全員座るのだが今回は客が多すぎてバスの台数が足りず立ったまま乗車する登山者も出るほどだった。バスは全部で10台くらい出たと思う。私は5台目に乗ることができた。バスの座席が全部埋まるよう、最後の1席の余りが出た場合は単独行者を乗せるのだが、あれだけたくさん並んだ中で単独は私一人だったので早く乗れたのだった。ほとんど2人以上という事実にちょっとビックリした。

広河原の北沢峠行きバス乗場 北沢峠

 夜叉神登山口でも数人が乗車(どうにか乗れた)、広河原でどっと降りて北沢峠組とその他に分かれる。北沢峠行きのバスは客の積み残しはなかったようだ。野呂川出合で数人が降りた他は北沢峠まで。峠は大賑わいだった。ここで半ズボンに履き替えて出発。

仙丈ケ岳へ歩きだす 北岳

 もう何度も歩いたルートなので迷うことも無い。昨年見たステンレスの謎の管は健在。樹林の隙間から雲海に浮かぶ槍穂がはっきりと見えた。でもこっちが山頂に到着する頃にはガスが上がってきちゃうかな。隙間から見える北岳には白いものが残り、今年の残雪の多さを物語っていた。天気は最高で青空が広がり、シラビソ樹林は日差しが遮られて涼しく快適に登れた。

大滝頭 森林限界直下
森林限界から見た甲斐駒
小仙丈ケ岳直下 仙水小屋?のテント場
小仙丈ヶ岳直下から見た甲斐駒 小仙丈ヶ岳山頂
小仙丈ヶ岳から見た中央アルプス
小仙丈ヶ岳から見た北岳〜仙丈ヶ岳
小仙丈ヶ岳から見た南ア南部(クリックで拡大)
小仙丈ケ岳から見た槍穂

 大滝頭を通過して標高約2700m肩で森林限界を突破、一気に展望が開ける。いつ来てもこの瞬間が感激だ。ここで休憩しようかとも考えたが小仙丈岳までもうすぐなので我慢して歩き続け、小仙丈岳山頂で休憩。カールにたくさん残雪があるかと思ったらそうでもなくて残念。森林限界付近で休憩する人が多いようで、この山頂で休む人は短時間で出発していった。

仙丈ヶ岳へ向かう。まだ山頂は見えない 鞍部から登る
仙丈小屋 ほぼ3000mの稜線を行く
これから歩く仙塩尾根
3010m峰を巻く 藪沢カール
これが仙丈ヶ岳山頂 仙丈ヶ岳山頂

 ライチョウがいないかキョロキョロ探しながら歩いていくが、天気がいいからか姿を見かけなかった。鞍部から登りにかかり、ジグザグを切って高度を上げていく。稜線北側の巻き道に入ると山頂は近い。まだ時刻が早いので大混雑ではないようだ。完全に雪が消えた稜線を歩き、今年初めての3000m峰となった仙丈ヶ岳山頂に到着した。

仙丈ヶ岳から見た南アルプス(クリックで拡大)


 乗鞍、槍穂はまだ雲海の上だが、雲海がバラけて徐々に雲の背が高くなり始めていて後立山などは見えなくなっていた。南は荒川三山が高すぎてその先が見えないのが残念。これから明日にかけて歩く仙塩尾根が続く。ここでしばし大休止。あとは両俣小屋まで下るだけなので時間を気にする必要はない。他の小屋と比べてテント場は広いのに立地の関係で利用者数は少ないと予想され、急いでテント場を確保する必要はない。

北岳に雲がかかってきた 仙丈ヶ岳もガスが流れ始める

 たまに山頂にガスがかかるようになってきたが、まだ雨が降るような気配は無い。日が陰って涼しくなる方がうれしい。大ザックを背負って仙塩尾根へと入る。少し前に単独男性が下っていったが、その他に仙塩尾根に入った人の姿は見られなかった。私より後に出発した人についてはわからない。

大仙丈ヶ岳へと下る 大仙丈ヶ岳山頂

 いくら人が少ないとはいえ、藪山ではなくちゃんと登山道があるので迷うことも藪漕ぎすることもない。岩稜帯を下って登り返すと大仙丈ヶ岳山頂に到着。少し前まで先行者の姿があったが通過したようだ。こちらも休憩には早いので通過だ。時々ガスが流れて涼しい稜線を下っていくと先行者発見、少し急な下りで追い越すが、初日は荷物が重いせいかこっちの足取りも重めだ。両俣に下るまで何度か休憩が必要かもしれない。

大仙丈ヶ岳を下る ライチョウのヒナ。まだヒヨコっぽい
ライチョウの親。子を逃がすためかなかなか退いてくれなかった まだまだ先は長い

 ハイマツの稜線を下っていると登山道にライチョウの親子発見。通常、子供は数羽いるのだが1羽だけ、まだ雷鳥の姿というよりひよこに近い姿だった。人馴れしているのか登山道から立ち退いてくれず、ゆっくりと歩みを進めるとまず子供がハイマツの中に退避。親も一緒に消えるかと思いきや、人間が子供から離れるまでは人間の視線を引き付けるのがお役目と心得ているようで、なかなか逃げてくれない。非常にゆっくりと足を進めると同じ速度で登山道を後退していくのできりがない。何だかんだで5分くらい対面が続いただろうか、やっと親鳥も登山道を離れてハイマツの中に姿を消してくれた。後続の男性もこのライチョウを見ることができたという。今回の山行で唯一見かけた雷鳥となった。

もうすぐ森林限界が終わる 森林限界手前から振り返る

 森林限界を切る前に展望のいい場所で休憩、男性に先に行ってもらう。僅かな日差しでも暑さを感じ、時々ガスが切れると強烈な日差しで汗が出てくる。両俣小屋まで単純に下るだけかと思ったら細かいアップダウンが続いて意外と疲れる。ここより先の方がそのアップダウンが多くなるなぁ。

樹林帯に突入 2重山稜。でもここは蕗ノ平ではない

蕗ノ平山頂 色あせた布KUMOが下がっていた

 森林限界を切って樹林帯に入ってすぐが2重山稜でダケブキが自生して「蕗ノ平」にふさわしい場所だが地図の場所はここではない。GPSが無いと特定が難しい小ピークの連続する中のピークの1つに過ぎず、目印があってもたぶん通過してしまうだろう。その蕗ノ平は2年前にDJFと偶然ぶち当たった場所で、そのときに目印を残しているので分かるだろう。周囲をキョロキョロしながらシラビソ樹林を進み、僅かに稜線を右に巻くところで目印のあるピークを発見、いつのまにか布KUMOが増えていた。

深いシラビソ樹林が続く 伊那荒倉岳

 深いシラビソ樹林は下草が無く歩きやすいが、たまに出現する倒木が鬱陶しい。また、藪がない分だけどこでも歩けることを意味し、踏跡が薄いところは初心者だと不安を感じるかもしれない。まあ、目印があるから大丈夫だろうけど。大きなピークを登りきると男性が休憩中、ここが伊那荒倉岳だ。三角点と山頂標識があるが樹林で展望はない。10年くらい前に歩いているはずだが全く記憶がない。ただ、これで今まで歩いたことがない蕗ノ平〜伊那荒倉岳間を歩いたので、仙塩尾根は全部つながったわけだ。今の時期は虫が多く虫除けスプレーが活躍する。男性が再び先に出発、こちらはしばし休憩タイム。

高望池。伊那側にオーバーフローしていた まだ深いシラビソ樹林が続く
未処理の倒木が多い 2499m峰(独標)。ここだけ展望がいい

 鞍部に下ると前回は水が無かった高望池は満々と水をたたえ、オーバーフローして伊那側に流れ落ちていた。ということは今の池は水溜りではなく豊富な湧き水で飲料可能だろう。まあ、今は水は不足していないので補給しないけど。梅雨明け直後の今だけ限定かな。ニセピークを越えて2499m峰(エアリアマップの独標)に出ると少し岩が出てきて森林限界のように木の高さが低くなり展望が開ける。しかし今はガスが降りてきているので周囲の展望は良くない。男性はここで休憩していたが、こちらは横川岳で休む予定でそのまま通過する。

まだまだ深いシラビソ樹林が続く 横川岳山頂

 鞍部から登りにかかるとグイグイと登らされ体力を絞られた。傾斜が緩んで山頂かと思いきや、尾根が痩せて少し進んだ先で横川岳山頂だった。ここは何となく前回の記憶がある。ここまでで結構疲れたが、この先は正真正銘下りだけ、小屋までもう少しだ。休憩中に僅かに雨粒が落ちてきたが、それこそ1,2分で止んでくれた。予報では今日はまだ大気の状態が不安定で雷雨の可能性が高いが、どうにかテントを張るまでは降ってくれるなよ。

横川岳から下り始める 野呂川越
両俣小屋までもシラビソ樹林 平坦地になると小屋は近い

 独標で休んでいた男性がやってきてこちらも出発。小屋まで話しながら歩いたが、この男性は明日は広河原に下るだけとのこと。たぶん両俣小屋なら小屋泊まりでも滅茶混みはないだろう。横川岳から小屋までの間が最も倒木がひどく、一度倒木処理した後に大規模な倒木が発生したようで、あるまとまった範囲で多数のシラビソが倒れている箇所がいくつもあった。大ザックでは跨ぐのも潜るのも苦労する。ただ道は横川岳以前よりは明瞭かな。明日はまた野呂川越まで登り返すのが面倒だが水を得るためだからしょうがない。

両俣小屋 テント場。小屋近くの平地ならどこでもOK

 大きな水音が徐々に接近、右手に川が出てくると小屋は近い。小さな支流をいくつか越えると屋根が見えて両俣小屋に到着。小屋の前のベンチで休憩している登山者の姿が少ないこと! 今頃の北岳山荘や肩の小屋は凄いだろうに。テント場もガラガラで川に近い場所なので平地も豊富、樹林中で雷が来ても落雷の心配は少ないし、今日のような不安定な天候でも比較的安心してテントを張れる。久しぶりにフライを張った。

 頭上に木の枝が広がっている下にテントを設営し、川で水浴びしてさっぱりしてから幕営の手続き。ここは\500/人/日で、南アは全域で\600だと思っていたのに安かった。ここは林道があって車での荷物の出し入れが可能だからだろうか。夕方になって晩酌して寝たが雨は無く気温も高めで快適だった。

まだ暗い樹林を野呂川越を目指す 倒木処理されているところ
倒木処理されていないところ 野呂川越

 翌朝、まだ薄暗くライトが必要な中を出発。本日の目的地は北岳山荘なのでゆっくりでも問題ないのだが、できるだけ早朝で気温が低い時間帯に高度を上げて汗をかくのを抑えたいとの考えがあった。また、北岳山荘のテント場でいい場所を確保するためにも早く着いたほうが確率を上げられる。樹林の中はかなり暗いが野呂川越までは昨日歩いているので大丈夫だろうし、稜線に上がればもっとルートははっきりする。肉眼では問題ない明るさになっても樹林の中ではデジカメのシャッター速度が0.5秒とかえらく遅いため三脚が無いと手ぶれ確実。こんなときは太い木の幹にデジカメを当てて撮影するのがよろしい。倒木地帯で1箇所ルートをミスったがすぐに気付いて修正、再びシラビソ樹林を登り野呂川越に到着、少し休憩する。

野呂川越から三峰岳方面に進む シラビソ樹林の尾根が続く
樹林の隙間から見た仙丈ヶ岳 今日もシラビソ樹林の尾根が続く
2570m肩 隙間からやっと間ノ岳が見えた

 休憩を終えて出発してすぐ、扇を落としたことに気付いて野呂川越に逆戻り。鞍部近くで無事落し物発見。3000mの稜線では出番がないだろうが、明日の下りで活躍するだろう。仙塩尾根に乗ると道が明瞭となり倒木も少なくなる。樹林で日差しが無く涼しく順調に距離を稼ぐ。最初はなかなか高度を上げずに水平移動だが、徐々に傾斜が出てくる。後続の単独男性が接近してきたので追い越してもらう。以降、この男性の後を追うようになる。

森林限界突破 2699m峰へと登る
2699m峰から見た仙丈ヶ岳 2699m峰から見た三峰岳に続く尾根
2699m峰から見た黒檜山と二児山の稜線(クリックで拡大)
2699m峰から見た中央アルプス(クリックで拡大)
2699m峰から見た北アルプス(クリックで拡大)

 この尾根も森林限界はほぼ標高2650mで、この標高が近づくとシラビソが細く低くなり、代わってダケカンバが増えてくる。立ったハイマツも見られるようになり森林限界近しの匂いを感じられる。肩のような場所に出るとようやく森林限界を突破、視界が開ける。なつかしの黒檜山は谷を隔てたすぐ向こう側。三峰川の対岸には丸山谷ノ頭〜風巻峠へと続く稜線。地形図に書かれていない林道が通っているが使ったことはない、というか、マイカーが使えないのでは使う必要性が無い。三峰岳はハイマツの緑の絨毯も切れて岩稜帯一色でぴょこっと頭が尖っている。よ〜く見ると先客の姿が。熊ノ平発か農鳥小屋発か、それとも北岳山荘発だろうか。

三峰岳が徐々に近づく 岩稜帯の尾根を巻いてを登る
仙丈ヶ岳を振り返る 熊ノ平小屋

 視界が開けた場所で休憩しようかとも思ったが、まだ体力的に大丈夫だし気温が低く汗をかかないうちに登った方が得策なので三峰岳まで頑張ることにする。森林限界を超えたばかりは立ったハイマツだったが、さらに高度を上げると地を這うハイマツになり、もっと高度を上げるとハイマツは消えてお花畑となる。三峰岳直下はゴツゴツした岩稜帯で、遠めに見るとどう登るのかと心配になるがちゃんと安全なルートがあり稜線を巻いてさらに登る。

間ノ岳の稜線に乗る 三峰岳山頂
三峰岳から見た北アルプス(クリックで拡大)
三峰岳から見た北岳〜南ア南部(クリックで拡大)

 稜線よりも東側で間ノ岳との稜線に合流、右に曲がって三峰岳山頂を目指す。岩を縫うように道が付けられており、登りきったところに見覚えのある東海フォレストの山頂標柱が立っていた(たぶん前回来た時にはこいつは無かったと思う)。標高2999m山頂だ。ずっと先行していた単独男性が休憩中。本日の予定は私と同じで北岳山荘までだそうだ。まだまだ時間はあるのでのんびりできる。さすが3000m近い場所からの展望は良好で、今日も北アルプスまで良く見えている。

三峰岳から見た間ノ岳 正真正銘3000mの稜線歩き

 男性は先に出発、私は軽く飯を食ってから出発。その間に間ノ岳方面から単独の男性が下ってきた。行き先は聞かなかったが仙塩尾根を南下だろう。間ノ岳に登り始めると女性2人が下ってきて仙塩尾根南下だとのこと。天気予報ではこれからしばらく好天が続くそうなので素晴らしい山行となるだろう。この女性の情報では、大樺沢のコースは今日から通行可能とのこと。雪渓にステップを切ったのだろうか。もしそうなら明日の下りは大樺沢がいいかな。展望の良い3000mの岩稜帯歩きはいかにもアルプスらしくて気持ちが良い。

崖が出てくると登山道は右を巻く 北岳
人の姿が見えるのが山頂 間ノ岳山頂

 尾根上が崖になると登山道は右側を巻くようになるが、そこで少し外してしまい崖を登るところだった。登れないような垂直の壁ではないのでいこうと思えば行けると思うが、衆人環視の中で登山道以外を進むのははばかられるので戻り、正式ルートを探し当てた。間ノ岳山頂部はだだっ広くて前回登ったときはガスって先が見えず、ルートに不安を感じたが今日のような好天時は全くそんなことはない。最後になだらかに登ると山頂に到着した。

間ノ岳から見た富士山 間ノ岳から見た北岳
間ノ岳から見た北半分のパノラマ展望(クリックで拡大)
間ノ岳から見た南半分のパノラマ展望(クリックで拡大)
間ノ岳から見た仙丈ヶ岳〜三峰岳の稜線
間ノ岳から見た北アルプスから妙高山(クリックで拡大)

 山頂は標識よりも人間の多さが目立つ場所で、思ったよりも軽装姿の人が多かった。今の時刻から考えて北岳山荘から往復というのは考えにくく、おそらく肩の小屋からの往復組だろう。そうだとしたら、この人達は今日は肩の小屋に戻ってもう1泊ということか。2泊3日で北岳と間ノ岳に登るのなら、今回の私のように仙丈ヶ岳から縦走した方が充実感が得られるような。本当なら白根三山縦走がいいが奈良田のバスの便がどうなっているのか不明では奈良田に下れないか。時間調整でしばし山頂で展望を楽しんでから北岳山荘に向かった。

間ノ岳を振り返る 三峰岳
中白根山〜北岳
中白根山山頂 中白根山から見た北岳
中白根山から見た間ノ岳 中白根山から見た北岳山荘
北だけを中心としたパノラマ写真

 北岳方面への登山道には北上する人、南下する人ともたくさん姿があった。さすが白根三山、そして梅雨明け直後の3連休が重なった状況だけある。さて、この時間で北岳山荘はどれくらい人が入っているだろうか。今日入山した人はまだ到達する時刻ではなく、せいぜい熊の平か白根御池小屋発の人くらいだろうから、混雑しているはずはない。中白根山の広い山頂を通過すると北岳山荘が見えてきたが、まだテントの数は少なく場所取りは問題無さそうだ。それはいいとして驚いたことに小屋前の浅い凹地にたっぷりの残雪があったことだ。97年だったか、同じような時期にここで幕営したときには雪など影も形もなかったので、今年の残雪の多さが分かる。あそこもテント場だったような。

北岳山荘。小屋裏に残雪あり 北岳山荘

 北岳山荘に到着し、まずは手続き。八本場のコルから山荘までの巻き道は残雪が消えて通行可能になっていたが、大樺沢のルートは特に整備したとかはなく、登りはともかく下りはピッケルは不要だがアイゼンがあった方がいいとのこと。たぶん日中の気温が上がった時間帯なら雪が腐ってアイゼンも不要となろうが、明日下るのは早朝で雪が締まっている確率が高い。滑らなければ問題ないが、アイゼンもピッケルも無い状態では滑ったら止めようがない。今回は大樺沢ルートは諦めて肩の小屋経由で下ることに下。

テント場 テントが徐々に増えてきた

 メインのテント場は小屋の北側と東側にあり、南側の広く浅い凹地は石ころが多くて砂地は限られている。前回はそちらに張ったような気がするが、凹地なので下界の展望がなく、今回は北側のテント場に陣取った。しかしこの選択は失敗で、北側のテント場は平坦地が多いし凸凹も少ないのでテントが密集し、夜中もうるさいパーティーがいて安眠できなかった。南のテント場だと適地が分散してお互いの距離がとれるので静かに過ごせただろう。前回来たときのテント場の埋まり方は凄かったが、今回は少しマシな気がした。学生パーティーが見当たらないのが原因か。もう夏休みに入っているだろうに・・・・。でも話によるとこの日のテント数は80張だったそうだ。小屋泊まりは1枚の布団に3人! 殺人的な混雑だなぁ。やっぱ夏山の週末は恐ろしい。

平坦地が水源。道もあるが登り返しが大変 小屋東にもテント場あり
夕暮れの北岳 夕暮れの中白根山

 天候は思ったよりも安定し、午後はガスが上がってきたが夕方には晴れて甲府盆地が見えるようになった。雨は来ず、適度な風が吹いてテントに露が着かなかったのはありがたかった。夜中の気温は10℃前後、下界の暑さに慣れた体には少し寒かった。今回は北海道の山行で持っていったダウンジャケットを家に置いてきてしまい、セーターとフリースで代替したので防寒性能は少し劣っていた。熟睡できないほど寒くはなかったのは幸いだ。

夜明け前の間ノ岳 八本場ノコル分岐

 翌朝、北岳山頂で日の出を迎えるべく3時前に起床、飯を食ってテントを畳み4時前に出発。少し西風が強く、最初からTシャツに半ズボンでは寒いので長袖シャツにジャージを履いて歩きだす。まだ真っ暗でヘッドランプを着けて出発、北岳への登山道には点々と明かりが見える。登る人が多いが肩の小屋発の人だろうか、下ってくる明かりも見えた。この時間に既に北岳を越えると言うことは農鳥まで往復だろうか。軽装の単独男性が下っていった。

北岳山頂。この位置で日の出を迎えた 奥秩父から日の出

 岩稜帯なので明るくなるのは早く、4時半前にはライトは不要となる。日の出と山頂到着とどちらが早いか追いかけっこだ。おそらく山頂には肩の小屋発の登山者が既にたくさん上がっているだろう(北岳山荘より肩の小屋の方が標高が高い)。山頂の人だかりが目に入った頃日の出を迎えた。今の時期は奥秩父から日が上がってきた。山頂到着は日の出から僅かに遅れたが、山頂でご来光を迎えるのが目的では無いのでまあいいだろう。

北岳山頂 北岳から見た富士山
北岳の影。こんなに明瞭とは! 八本場ノ頭にテントが1つ見えた
北岳から見た中央アルプス(クリックで拡大)
北岳から見た北アルプス(クリックで拡大)
北岳から見た南アルプス(クリックで拡大)
北岳から見た東半分(クリックで拡大)
北岳から見た上越国境〜奥日光(クリックで拡大)

 本日の展望は言うこと無し! 稜線には全くガスがかかっていないので360度の大展望が広がり、空気の透明度が高くて北アはもちろん妙高火打、上越国境の一部(ここは広範囲に雲に入っていた)、そして奥日光までも見ることができた。たぶん前前回北岳に登った時にも奥日光が見えたと思うが、どれくらいの確率で見ることができるのやら。あまり高くはないと思う。北アも奥日光もすっきり晴れているので、今日の日光白根からは南アだけでなく槍穂や後立山、そして立山、劒岳まで見えているだろう。伊那盆地に目を移すと北岳の影が長く延びていた。「影鳥海」ならぬ「影北岳」だ。こんなものまで見られたのだから今回の山行は大満足だ。

肩の小屋へと向かう 肩の小屋。減ったはずだがえらいテントの数!
肩の小屋が近づく 肩の小屋と北岳
肩の小屋から見た北アルプス(クリックで拡大) こんなに見えるとは!!

 山頂で着込んだ防寒着を着たまま肩の小屋方面に下山開始。たくさんの人が登ってくるし下ってくる。肩の小屋が目に入るとえらくたくさんのテントの花! なんと、北岳山荘のように一番いいテント場は残雪に埋もれて使用不能(まあ雪の上に張ってもいいのだろうけど寒い!)、おかげで周囲の裸地のあちこち広範囲にわたってテントが設営されていた。その数は確実に北岳山荘を上回るだろう。今年は大樺沢コースが残雪が多くてアイゼン等が必要であり、残雪期の経験がない一般登山者は肩の小屋を経由して登っていくのが通常なので、北岳に登るには初日の宿泊地が肩の小屋に集中するわけだ。しかしまあ、モロに風が当たってしかも傾斜地の西斜面までテントがあるのには驚いた。北岳山荘に泊まってよかったぁ。肩の小屋でトイレ休憩。

小太郎山分岐へ向かう 小太郎山分岐で稜線を離れて下る
明るい浅い谷を下る 白根御池小屋テント場が見えてきた
池山吊尾根

 あとは広河原まで下山のみ。白根御池小屋経由で下ることにする。小太郎山分岐を通過して稜線東側に下ると風が遮られて暑くなるため、ここでTシャツに短パンに変身、森林限界から樹林帯に入って日陰で涼しくなるかと思いきや、このコースは密度が薄いダケカンバ中心の樹林で日当たりが思ったより良く、風が無いので暑かった。まだ早朝だったからいいが、日中登るには大いに汗をかかされそうだ。

白根御池小屋テント場 白根御池小屋テント場から見た北岳
白根御池小屋 トラバース道は沢をいくつか横断

 やがて色とりどりのテントが見えてくると白根御池小屋だ。テント場は池のほとりにあって雰囲気がいい場所だった。ここは肩のようになっていて平坦地が広がっていた。この先のルートはしばらく等高線に沿ってトラバースが続く。小屋から先で樹林は深いシラビソに変化、日が陰って涼しくなる。肩の小屋発か白根御池小屋発か分からないが数人パーティーが先行する。しばしその後を付いていったが、沢が登場したところで汗を洗い流すためこちらはいったん休憩、顔を洗い腕も洗って昨日分の汗を含んだタオルを洗う。これでさっぱり、体感温度が下がって爽快に歩ける。

ここから急激に高度を下げる シラビソ樹林の急な下りが続く
大樺沢のコースと合流 もうすぐ広河原山荘

 トラバースが終わって下りになると急激に高度を下げる。ここも深いシラビソ樹林が続いて日差しが遮られて涼しく、扇で扇ぐ風も涼しく快適だ。先行するパーティーは足が強いようで私のスピードでも追いつくことなく等間隔を保っていた。水音が大きくなってくると大樺沢沿いの登山道は近く、いつの間にか合流していた。

広河原山荘 広河原山荘のテント場
吊橋を渡る ゲートの向こうがバス停

 広河原山荘に到着してテントを干しつつ着替え。濡れタオルで体を拭いて汗臭いTシャツから予備のTシャツに着替えた。帰りのバスの便は多くないのでタクシーかと考えつつまずはバス停へ。時刻表を見ると8時の便があり、今はその数分前。グッドタイミングだった。バスはちょうど座席が埋まる程度の客の入りで出発、夜叉神峠で数人が降りて数人が乗り、芦安駐車場に到着した。

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